こんにちは!今回の記事を担当するのは、和歌山しごと暮らし体験で株式会社はまさとを訪問した河村です。
※しごと暮らし体験とは、地域での仕事と日常生活を短期間で体験し、移住を具体的に検討できる制度で、㈱はまさとでは和歌山県のしごと暮らし体験の受け入れを行っています。
今回はその一環として、産直ECサイト「5STAR MARCHE」のお仕事を体験させていただきました。その中で訪れたのが、梅農家「大志農園」です。
現在、大志農園は井口さん兄妹が中心となって営んでいます。
妹のゆみさんは、もともと海外に住んでおり、第一次産品の販売や輸出入に携わっていましたが、2008年頃から実家の梅農家を手伝い始め、「地元の梅産業に貢献したい」という思いからUターン就農。現在は本格的に農業に取り組んでいます。
そんな井口さんに、梅づくりへの想いや、お客様へのこだわりについて直接お話を伺いました。
農業や梅については何も知らない私ですが、井口さんのお話や農園の様子にふれる中で、「だから直送っていいんだ」と素直に感じたことがいくつもありました。
この記事では、当日の体験の様子とあわせて、私なりに感じた“産地直送の魅力”をお伝えします。
大志農園での梅しごと体験

当日は11時に大志農園に訪問しました。すでに収穫作業は終わっており、作業場では梅の仕分けが進められていました。
私も実際に、選果機でサイズごとに分けられた梅を、目視で品質別に振り分ける作業を体験させていただきました。
選別の基準は主に以下の3点です。
- 色見:青みが強く、熟していないものは除外
- 完熟度:熟れすぎているものも商品から外す
- 傷の有無:見た目に違和感のあるものは、「訳あり品」として扱う
実際にやってみると、「一見きれいに見えるのにダメなの?」と思うものも多く、プロの目の厳しさを感じました。
”5STAR MARCHE”で商品を出品するにあたり、「お客様に直接届けるからこそ、120%満足してもらえるものを届けたい」——
そんな井口さんの想いが、ひとつひとつの梅に込められていることを実感しました。
「農家直送」に感じた魅力とは?

食べごろの梅がそのまま届く
皆さんの手元に届く梅は、「いつも最適な状態で届いて当たり前」と感じているかもしれません。
ですが実は、農家が“今が一番おいしい”と感じるタイミングで、収穫・出荷できていないケースも多いのです。
たとえば、一般的な流通を経た場合。
農家は、お客様のもとに届くまでの時間を逆算して、ベストな状態になる“前”の梅を出荷しなければなりません。
収穫時期は、ベストな状態より2〜3週間も早くなることもあるそうです。
本当は「今が完熟!」という梅を届けたいのに、それを泣く泣く見送って、まだ熟れていない梅を出すことも。
結果的に、本当に良いタイミングでお客様に届いているかどうか、農家としても不安が残るそうです。
その点、農家直送なら、農家の目で「今がベスト」と判断したタイミングで、収穫・出荷ができます。
さらに、先述のように、井口さんがひとつひとつ丁寧に選別した梅だけが出荷されるため、より品質の高い商品をお届けできるのです。
これは、農家直送ならではの大きなメリットだと感じました。
“想い”の見える商品に出会える
今回の体験で私がいちばん強く感じ、伝えたいと思ったのは、農家さんが“我が子のように”愛情を注いで梅を育てているということです。
そして、人と同じように、梅にもそれぞれ“個性”があることを学びました。
たとえば、同じみなべ町でも農家によって育て方やこだわりが異なり、梅の味や風味に個性が表れます。
さらに、同じ農家であっても、木の位置や実の場所によって日当たりや水分量が変わり、それが梅の個性につながるのです。
この“個性”は、農家さん一人ひとりの愛情と工夫によって育まれます。
どうすればもっとおいしくなるか。どうすれば美しく育つか。どうすればお客様に喜んでもらえるか。
そんなふうに日々向き合っているからこそ、梅にも“その人らしさ”が宿るのだと感じました。
今回お話を伺った井口さんは、海外での教員経験もあり、地域や人に対する想いがとても強い方です。
目の前のことにひたむきに取り組み、より良い梅を育てようとする姿勢が、地元の人々の信頼を集めています。
生産者の想いを知ることで、これまで何気なく食べていた梅一粒一粒にも、自然と心が向くようになりました。
そんなふうに“特別な意味”を感じられる商品に出会えるのも、農家直送ならではの魅力だと思います。

今回の体験で得た気づき
これまで私は、食材を選ぶとき、価格や品質、味といった“モノとしての条件”ばかりを見ていました。
それが、誰によって、どんな想いで作られたものなのかを考えることは、ほとんどありませんでした。
スーパーの棚に並んだ食材を目にすると、まず気になるのは「いくらか」。
日々の家計をやりくりする中で、そう考える人も多いのではないでしょうか。
けれど今回、井口さんと直接お話し、その作業や想いにふれたことで、
「誰が作ったか」がわかるだけで、その梅に対する親しみや愛着が、まるで違って感じられました。
生産者の顔が見える買い物は、ただ食べ物を手に入れる行為ではありません。
その背景にある想いや、日々の工夫、暮らしぶりにふれることで、“人とつながる体験”そのものになるのです。
食事は何気ない日常の一部ですが、そこに人とのつながりを感じることで、ひとつひとつの食卓にあたたかさが加わり、毎日の暮らしがより愛おしく感じられるようになると実感しました。
このレポートを通して、生産者の想いや背景に、ほんの少しでも心を寄せるきっかけになれたら嬉しいです。