和歌山の南端でつくられる無農薬生姜

和歌山の南端でつくられる無農薬生姜

南村真衣

生姜焼き、お鍋にいれる鶏だんご、炊き込みご飯や佃煮に、、、今まで生姜は日常的に食してきましたが、その生姜の概念を覆すくらいに辛い生姜に出会いました。その生姜が生産されているのは、その土地の99%以上が森林だという、和歌山県の色川区域。生姜農家の安田さんが栽培される、無農薬生姜の魅力に迫ります!

安田裕志

vegi like:安田裕志さん

農業法人で無農薬生姜を生産する経験を経てその後独立。質の良い無農薬生姜が作れる場所を探すなかで、村全体が無農薬栽培・山からの湧き水で農業を行う色川に出会い、移住を決意。 パンチのきいた辛さの生姜が評判になり、県内外の飲食店に無農薬生姜を卸している。 昨年より、5STAR MARCHEを通じて一般販売を開始。生姜の他に、無農薬菜の花の生産も手掛けている。

 

 南村真衣

南村真衣

5STAR MARCHE運営責任者。地元和歌山でおいしい食品発掘、生産者訪問を担当。色川の安田さんとは昨年食品展示会で知り合い、その生姜のわさび級の辛さに感動。以後、新生姜と土生姜、生姜パウダーを取り扱う。和歌山県有田市出身。

(南村)ご無沙汰しております!新生姜の季節にお招きいただき、ありがとうございます。

(安田さん)こんにちは。遠いところありがとうございます!色川へようこそ。この道を上ったところに生姜畑がありますので、早速ご案内しますね。

色川の村

山と山の間に、ちょこんと腰掛けるように存在する色川の村。水道が通っていないので、山からの湧き水や川の水が生活用水です。

(南村)那智の滝の近くに、こんな村があるとは知りませんでした。のどかなところですね。

(安田さん)那智の滝に観光に来られても、こちら側までは来られないですもんね。人口は400人くらいなので、住民皆が顔見知りのようなところです。 そして、住民の半分が外からの移住者。全国でもめずらしいですよね。生徒数は少ないですが、区内に保育園も、小中学校もあります。 もうそろそろ、生姜畑が見えてきましたよ!

生姜畑

(安田さん)分かりにくいかもしれませんが、柵に囲まれているところが生姜畑です。

(南村)すでに、生姜の香りがただよってきていますね。生姜は砂地で育てられるイメージがありましたが、こちらは粘土質な土なのですね!

(安田さん)良く気が付いてくれましたね。僕のところでは、水分をよく含む、栄養のある土で生姜を育てているんです。雨の量はコントロールできませんが、畑を傾斜の段々畑にすることで水が溜まりすぎないように、上手く流れていくように工夫をしています。あとは、一面広く生姜畑を作ってしまえば管理が楽なのですが、無農薬でやっていると生姜が病気になった際に、周りの生姜にも感染してしまうことが多い。なので、小さく、数か所に分けて栽培をするようにしています。

生姜

川から引っ張ってきた水を使って生姜を洗います。

(安田さん)ひとつ引っこ抜いてみましょう!

生姜

(南村)あまりスーパーでは見ることのない、立派な生姜ですね!採れたてのショッキングピンクが綺麗…!色川で生姜を栽培されているのは、安田さんだけなのですか?

(安田さん)これくらいの規模でやっているのはうちだけですね。でも、種をお裾分けした村の人は自分の家で食べる分を自分でつくっていたりします。ここに住む人は、大なり小なり農のことをやりながら暮らしていて、そういう雰囲気も良いですよね。自分は、独立したらどこで農業やろう?と探している中で色川に出会ったのですが、ここに来て、もう直感で「ここでやろう!」と決めました。その日に色川地域振興推進委員会の方に「独立したら、ここに引っ越します!」とお伝えしたという感じでしたね。

(南村)運命的な出会いだったのですね…!ところで、生姜栽培の年間スケジュールって、どんな感じなのでしょうか?

(安田さん)まず4月に種をうえて、土があったかくなるようにマルチシートを敷き詰めます。「芽出し」という作業なのですが、1日20度くらいの最高温度で30日、積算で600度くらい、これでやっと芽が出ます。芽が出てきたら、その芽の部分のマルチシートに一つ一つ、穴をあける作業の始まりです。

(南村)気の遠くなりそうな作業です!

(安田さん)それが5月いっぱいくらいまでですかね。芽がひとしきり出たな、というところでマルチシートを全部あけてしまって、6月は土を盛って、藁をしいていく作業です。あとは除草をその都度という感じです。もし生姜の茎に虫が入ってしまったら生姜が枯れてしまうので、茎を開いて虫を出すということを手作業でやっていきます。通常、真夏に収穫するイメージの強い新生姜ですが、うちの生姜は地植えでじっくり。秋が新生姜の季節です。生姜の可食部分はずっと土の下にあるわけなので、今年の生姜の出来、っていうのは収穫時まで分からないんですよ。この時期に収穫するのが「新生姜」、もう少し後に収穫して、貯蔵したものが「土生姜」です。

(南村)自然と土の力で育てて、土の中で栄養を蓄える時間も長い…安田さんの生姜の味わいが力強く、濃い理由が少し分かった気がします! 最後に、安田さんの生姜のアピールポイントを教えてください。

(安田さん)とにかく手をかけて栽培をしています。大量生産は難しいですが、1つの生姜に繊維が詰まっていて、味も濃い。このあたりは、一度食べていただくと気づいていただけるかと思います。せっかく色川で作っているので、この土地についても記事を通して知ってもらえると嬉しいですね。生姜だけではなく、色んな作物をおいしく栽培できる条件が揃っている。山に囲まれていて水や空気が良く、ここで農作をしているみんなが無農薬栽培というところも、注目していただきたい。全員が有機栽培に取り組んでいるので、周りの畑から農薬が飛んできたり、化学肥料が水で流れてきたりすることもないんです。

、掘りたての生姜

(南村)本日はお時間いただき、ありがとうございました!

(安田さん)ありがとうございました!